日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
福岡県民が木材に求める殺蟻性についてのスギ挿し木品種特性
森 康浩上田 景子大川 雅史宮原 文彦
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 94 巻 3 号 p. 127-134

詳細
抄録
木材のエンドユーザーのニーズを把握するため, 一般の福岡県民にアンケートを行った結果, 木材の嫌いな点も改善すべき点も「シロアリに弱い」が最多回答であった。そこで, DNA分析で品種を明らかにしたスギの心材木粉でイエシロアリまたはヤマトシロアリを飼育し, 殺蟻性の高いスギ挿し木品種を探索した。供試品種の中ではアカバとイワオは死虫率が高く, 半数致死日数も短かったことから, 殺蟻性が高いと考えられた。特に, アカバは産地が異なっても高い殺蟻性を示した。これに対し, ホンスギは一貫して低い殺蟻牲を示した。抽出成分を除去した木粉でヤマトシロアリを飼育すると, アカバをはじめ各スギ品種の殺蟻性は大きく低下した。一方, 木粉は摂食できないが揮発性成分には曝露される条件下でヤマトシロアリを飼育しても, イワオとアカバはコントロールに比べて高い死虫率を示した。以上のように, 殺蟻性の品種特性は一定の再現性が得られ, これは揮発性成分を含む抽出成分の特性に左右されていることが示唆された。したがって, 殺蟻性の高いスギ品種を用いた挿し木林業は, エンドユーザーの求める木材を持続的に供給するための選択肢の一つになりうると考えられた。
著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top