2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s54
IL-2はTreg細胞の重要な増殖因子だが、IL-2受容体(IL-2R)は通常のT細胞(Tcon)にも発現しており、特異性はない。そのため、免疫制御目的にTreg細胞を増殖させようとIL-2を投与すると、逆にTcon細胞による拒絶反応を惹起することになる。我々はIL-2とIL-2Rの結合部位を遺伝子工学にて直交型(orthogonal;ortho)に改変することで、各々が特異的に反応するが、相対する野生型には結合しないortho IL-2/ortho IL-2Rペアを作成した。本研究では、ortho IL-2Rを体外でTreg細胞に導入し、ortho IL-2を投与することで、この改変Treg細胞(ortho Treg)を特異的に増殖させることができるか、マウス骨髄移植モデルで検証した。
ドナー骨髄細胞とともに投与されたレシピエント由来のortho Tregは、ortho IL-2投与により有意に増加し、骨髄の生着を促進した。野生型IL-2はTcon細胞を増殖させ、骨髄拒絶を促進したが、ortho IL-2ではこのような副反応は全く認めなかった。骨髄移植後に同一ドナーからの心臓移植を行ったところ、ortho IL-2投与群は、非投与群や野生型IL-2投与群と比べ、有意に心臓グラフト生着期間を延長した。以上から、細胞工学により作成されたortho IL-2/ortho IL-2Rペアが新しい鍵と鍵穴として機能することで、Treg細胞による移植免疫寛容誘導の効率を改善できる可能性が示唆された。