Journal of UOEH
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高圧環境下における聴性脳幹反応を用いた脳幹機能の評価
和田 伸一松岡 成明角谷 千金士横田 晃毛利 元彦
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1988 年 10 巻 3 号 p. 317-324

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抄録
大陸棚開発に必要な水深300mでの海中作業技術の確立と安全を目的とした海洋技術センターでの潜水シュミレーターを用いて実施された実験に参加し, 加圧経過中, 聴性脳幹反応(ABR)を4人の被験者(プロダイバー)に記録する機会を得た. 被験者は全員水深150mまでは何ら異常を示さず, ABRも変化なかったが, 水深150-250mで関節痛, 多幸, 振戦, 運動失調, 呼吸困難等を次々と訴え, ABRのⅠ-Ⅲ,Ⅰ-Ⅴ頂点間潜時も有意に延長した. この頂点間潜時の延長は水深300mまでに一旦回復する傾向がみられた. また, これらのABRの変化は体温変動と相関性はなく, 刺激条件等の影響も考えられず, He-O2ガスの加圧による脳幹機能の一過性の機能低下によるものと考えられた. さらに,Ⅰ-Ⅲ, Ⅰ-Ⅴ頂点間潜時は互いに独立しており, このことはABRのⅢ波, Ⅴ波の発生源へ達する刺激が独立した別々の伝導路を通る可能性を示唆する所見と考えられた.
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© 1988 産業医科大学
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