2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s86
【はじめに】生体肝移植レシピエント手術において、術中の肝動脈解離は非解剖学的肝動脈再建への移行や、術後の重大な合併症を引き起こすことがあり、術中肝動脈解離の予防が重要である。我々は肝十二指腸靭帯の剥離の際に左および中肝動脈結紮処理を行わない手術手技を2014年より導入した。今回新たな手術手技の成績に関して検討を行なった。【対象・方法】2009年から2019年までに当院当科にて生体肝移植手術を施行したレシピエン365症例を対象とした。導入前195例と導入後170例の2群間で臨床因子および術後成績との関係について傾向スコアマッチングを用いて検討を行なった。【結果】導入前群でC型肝炎罹患症例(p=0.0020)、肝細胞癌合併症例(p=0.0497)が多かった。また、導入後群で糖尿病罹患症例(p=0.0238)、長期ステロイド投与症例(p=0.0026)が多かった。導入後群で術中肝動脈解離が有意に減少した(p=0.0021)。傾向スコアマッチングを行い、導入前132例、導入後132例で検討を行った。背景因子に差はなく、術中肝動脈解離が導入後群で有意に減少した(p=0.0295)。【まとめ】生体肝移植レシピエント手術において、肝動脈結紮を行わない新たな手術手技は術中肝動脈解離予防に有効である。