移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
生体腎移植ドナーの高齢化とその術前後の腎機能に影響を与える因子の検討
内田 啓子大木 里花子海上 耕平石田 英樹高木 敏男新田 孝作田邊 一成
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s97

詳細
抄録

我が国の腎臓移植件数は増加しているが、内訳は生体腎移植が増加した結果である。臨床腎移植統計によると2019年度のレシピエントの平均年齢は48才、ドナー58才(70才以上は15.9%)と高齢化している。当院では2005年より生体腎移植ドナー評価を腎臓内科医が担当しているが、高齢ドナーの適応は、加齢による腎機能低下や既往歴の判断に迷うことが多い。今回はドナーの高齢化に焦点をあて、術前の腎機能評価、術前後の腎機能の変化に与える因子(含む腎生検)の検討を行う。方法は2008-2018年に当院泌尿器科で生体腎移植を施行した成人患者873名のドナーデータを後方視検討する。解析全患者(N=873)の平均年齢は59.3±9.7歳、男性34%、女性66%であった。移植時のCr (mg/dl) /eGFR(mL/min/1.73m2) の中央値は男性0.81 /75.4、女性0.62/75.2でBMIは男性が女性に比して有意に高かった(23.5 vs 21.6、p<0.01)。移植後1年の腎機能をフォローアップできた523名については、1年後Cr値(中央値)男性1.25mg/dl、女性0.93mg/dl(p<0.01)、eGFR値(中央値)46.3、48.0(p=0.03)と男性は有意に腎機能低下を認めたが、ΔGFRは男女で差を認めなかった。これらの基礎データに加え、生活習慣病関連因子、基礎疾患、0時間腎生検の病理組織とドナー年齢、ΔCrの検討を加え、ドナーの年齢により影響因子に差があるかどうかも含めて報告し、今後の高齢化ドナーの適応について考察したい。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top