移植
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臓器提供意思を汲み取るための臓器移植ネットワークの取り組み
大宮 かおり芦刈 淳太郎
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s136_2

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抄録

 脳死下臓器提供はガイドライン第4に規定する要件を満たす施設に限定されており、2022年3月末時点で908施設ある中、体制を整えている施設は449施設であり、全体の約半数に過ぎない。

2016年~2021年までの6年間で、臓器提供の可能性がありながらも施設体制が整っていなかったため臓器提供に至らなかった事例は22例あった。また、ドナー適応のあった1416例中、家族からの申出がきっかけとなり臓器提供に至った事例は506例(35.7%)あったのに対し、医療者からの臓器提供に関する情報提供がきっかけであった事例は855例(60.1%)と多数を占め、2021年に実施したドナー家族に対する意識調査でも「臓器提供を考えたきっかけは医師から話を聞いた」と回答した割合が最多であった。

 JOTでは厚生労働省より助成を受け、臓器提供体制整備に係る各種事業を実施している。そのうち、臓器提供施設連携体制構築事業では、地域の中で臓器提供経験の豊富な施設(拠点施設)から経験の乏しい施設(連携施設)へ人的・技術的支援を行うことで、地域医療機関間の連携を構築・強化する取り組みを行っており、参加施設は年々増加傾向にある。2022年度は拠点施設が14施設、連携施設はのべ115施設であり、拠点施設は各ブロックに1施設以上配置された。さらに、各医療機関が臓器提供に関する学習や院内体制整備を柔軟に実施できる環境を整えることを目的として、e-ラーニングシステム(J-ELS)を構築し、様々な教育教材を提供している。

 患者や家族の意思を尊重し、移植を必要とする患者に不利益が生じないよう、医療機関が臓器提供を円滑に行うためのJOTによる取り組みを紹介する。

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