移植
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腎臓内科医と腎移植患者さんによる看護学生への臓器移植教育-患者参画による卒前教育の意義と効果-
村上 穣
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s140_1

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抄録

【はじめに】演者は2011年に腎移植を受けた腎臓内科医で、腎移植患者さんと共に医療系学生や看護師を対象とする臓器移植教育に携わってきた。

【背景】医療系学生の卒前教育で実施される臓器提供および移植の講義は必ずしも十分ではない。当院看護師を対象とした調査で、67.3%は臓器移植について系統的に学習しなかったと回答するなど教育上の課題が残されている。

【教育プログラム】2012年に看護学生および医学生を対象に腎臓内科医と腎移植患者さんによる卒前教育プログラムを作成した。目的は、臓器移植について正しい知識を身につけ、移植医療の在り方を考えてもらうことである。プログラムは、1)医師による臓器移植の系統的講義、2)腎移植患者さんによる体験談、3)グループワーク、4)振り返り、から成り、所要時間は90分または180分である。

【教育プログラムの効果】臓器提供の意思表示をしていない看護学生を対象にランダム化比較試験を実施した(教育プログラム群102名、資料群101名)。プログラム群の7名(7%)、資料群の1名(1%)が臓器提供の意思表示をした(リスク比 6.9 [95%信頼区間 0.9-55.3])。しかし、学生の家族による臓器提供の意思表示(12% vs. 2%; 6.0 [1.4-25.9])、家族との相談(31% vs. 16%; 2.0 [1.2-3.4])、臓器提供の知識については両群間に有意差が認められた。

【まとめ】腎臓内科医と腎移植患者さんによる臓器移植の教育プログラムは、臓器移植に関する看護学生の知識が増加するだけでなく、その啓発にも有効であった。移植看護学確立のためには患者参画による卒前教育も考慮する必要があるのではないかと考えられた。

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