移植
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移植看護における課題-実践の立場から-
西島 真知子近藤 奨司緒方 裕士日隈 香澄日比 泰造渡邉 玲子
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s140_2

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抄録

日本の肝移植は生体ドナーが大多数を占め、患者が2人となる特徴を有する。我々の570件超の経験から、移植看護の理想を議論する。生体肝移植レシピエントでは、親族から臓器提供を受ける点を鑑み術前より身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな側面から意思決定を含めた支援を行う。移植後急性期では高率な合併症を早期に発見・対処し、回復期では大量腹水や浮腫、創痛などが長期化し「こんなはずじゃなかった」と発言する患者も少なくなく、傾聴し支援する。また生涯にわたる免疫抑制状態を理解し自己管理能力を習得してウェルビーイングを確立する遠隔期看護に加え、昨今の家族関係の複雑化・脆弱化に根ざしたきめ細なか生活指導を要する。さらに近年の疾病構造の変化に伴いレシピエントの高齢化、サルコペニア、生活習慣病やアルコール依存など精神疾患を抱えた症例が急増しており、看護師が移植チームの中心で関連専門職と連携する役割をも期待される。生体ドナーでは、レシピエントと同じく様々な側面からの支援に加え、健常人が大侵襲手術を受けて患者となる特殊性や、レシピエントの経過がドナーの精神面に与える影響などを勘案した重層的な看護が要求され、早期の社会復帰を果たす援助が目標となる。生体肝移植に携わる看護師は、2人の患者を含む家族を包括的に捉え、深い信頼関係を築き、客観的で定量的な短期目標を患者・家族と共に立案し達成する看護観の醸成が望まれる。

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