移植
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移植看護学ー移植に関する4つの権利を守る
添田 英津子
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s141_1

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抄録

 移植医療が他の治療と異なる点は、移植を受けるには提供者から臓器/組織をいただかなければならないということである。それは、移植とは人と人との関係で成り立つという必然的に感情的な治療であるということを意味する。患者にとっては、移植を受けるか受けないかという決断は、自らの生命について考えるだけではなく、人と人とのきずなについても考えることになる。患者は、いつ訪れるかわからない死を意識しながら、孤独に悩むのである。

 一方、提供者とその家族がいる。病気や突然の事故で脳死状態になり、生前の意思のもとに臓器を提供する脳死ドナーや、家族のために臓器あるいは臓器の一部を提供する生体ドナー、また、自らも移植を受けつつ、ほかの誰かへ臓器を提供するドミノ移植の生体ドナーもいる。愛するものの死や病気という最悪の状況のなかで、誰かの喜ぶ顔がみたいというまったくの善意によって臓器提供が成り立つのである。

 「移植看護学」とは、移植を必要とする患者の移植を「受ける権利」「受けない権利」、あるいは、自らの臓器/組織を「提供する権利」と「提供しない権利」という、移植に関する四つの権利を守るため、看護とコーディネーションについて実践的に研究する学問であると、私は考える。

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