移植
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腎移植看護を学問として昇華するために-現状と今後の展望-
小坂 志保
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s141_2

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抄録

 本邦の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)患者は成人国民の約13%にあたり、糖尿病や高血圧と並びまさに国民病といえる。CKDが悪化し末期腎不全に陥った際には、腎代替療法選択が必要となり、血液透析・腹膜透析・腎移植の3つの選択肢がある。この中で年間導入数が最も多いのは、血液透析であり約32000人程度だが、腎移植もここ数年年間導入数の件数を伸ばし献腎移植・生体移植を合わせると2000件を超えてきており増加の一途を辿っているため、今後さらに腎臓病看護を行っていくにあたり腎移植の知識やエビデンスの集積は必須のものになると考えられる。

 腎移植看護の実践においては、レシピエント移植コーディネーターを中心として様々な取り組みがなされているが、現状では実践にとどまり彼らの介入によるアウトカムを成果として創出している状況にはない。加えて、腎移植看護が学問として確立しているかというと、本邦においては未だ成し遂げられていないのが現状であり、腎移植看護の研究者も少数である。そのため、実践知・経験知による臨床は行われているがEvidence Based Practice(EBP)の実践には弱さがあるのが事実である。

 2022年5月に日本腎不全看護学会よりEBPに基づく腎移植看護を実践するために腎移植ケアガイドが発刊された。腎移植の医学的知識のみならず、腎移植看護における重要なClinical Questionを抽出し国内外の文献レビューから推奨文・解説を掲載している。今後はこれを足掛かりに、腎移植看護を学問として体系化するためにより多くのエビデンスの創出が求められる。今回は国内外の腎移植看護の研究をレビューし現状と、今後の展望について検討する。

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