移植
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肺移植レシピエントに発症したCOVID-19の経験
川名 伸一杉本 誠一郎田中 真三好 健太郎氏家 裕征久保 友次郎清水 大松原 慧橋本 好平諏澤 憲枝園 和彦山本 寛斉岡﨑 幹生豊岡 伸一
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s143_1

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抄録

COVID-19流行初期の報告によると,肺移植患者に発症したCOVID-19の重症化率は約30%と一般集団よりも高く,致死率も10-40%と予後不良である.当院で肺移植後フォロー中にCOVID-19と診断された3例を報告する.【症例1】39歳男性.脳死右肺移植後10年.COVID-19流行第Ⅲ波の際に濃厚接触者となり,軽度の咳嗽を認めPCR検査で陽性と診断された.入院後にシクレソニド吸入とPSLの増量で加療され,8日後に退院した.1ヶ月後に発熱と咳嗽,右肺の広範なスリガラス影を認めたため再入院し,ステロイドパルス療法により改善した.COVID-19罹患後の急性拒絶反応が疑われる症例であった.【症例2】53歳女性.脳死両肺移植後3年半.第V波の際に発熱と下痢,嗅覚・味覚障害を認めCOVID-19と診断された.入院後,MMFの中止とレムデシビル投与,カシリビマブ/イムデビマブによる中和抗体療法により軽快したため14日後に退院した.【症例3】45歳男性.米国での脳死両肺移植後27年.慢性移植肺機能不全で加療中,第V波の際に妻がCOVID-19に罹患したため,PCR検査を施行され陽性と診断された.入院後に中和抗体療法を施行され10日後に退院した.症例2と3では,COVID-19軽快後の呼吸機能低下や画像上の変化は認められなかった.肺移植後のCOVID-19でも早期診断と早期治療により良好な予後が期待できるため,文献的考察を加えて報告する.

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