移植
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当院における小児脳死移植の経験 互助制度推進に向けての検討
笠原 群生阪本 靖介福田 晃也内田 孟清水 誠一岡田 憲樹中尾 俊雅兒玉 匡小峰 竜二平野 加奈子上遠野 雅美中里 弥生
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s146_1

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抄録

【はじめに】移植学会では、提供施設の近隣の移植施設から摘出チームを提供施設に送り、実施施設の移植医の負担軽減を目的とした互助制度を取り入れている。また、現在の新型コロナウイルス感染・医師の働き方軽減の社会情勢を受け、移動を最小限にするためにもこの制度を推進している。

【対象】今回われわれは、互助制度導入後である2020年1月から当院で経験した20事例の脳死肝移植から、互助制度について検討した。なお、当センターは3名の指導医、3名の医員、2名のレジデントで肝・腎・小腸の小児移植のドナー・レシピエント全手術を行っている。

【結果】制度導入後の20事例中25%の5事例に互助制度が導入されていた。また、20事例中1事例は肝臓摘出、分割まで当院で行い、他施設に分割肝を搬送する事例であった。互助理由は全例で労働力不足であった。労働力不足の原因としては、ドナー摘出手術、レシピエント手術が平日であり日常業務調整が困難であったこと、自施設でレシピエント2例の手術を同時で行わなければならないことが挙げられた。全事例でドナー摘出からレシピエント終了までに大きなトラブルは認められなかった。

【結語】術当日の人員不足が想定される中でも、互助制度を利用することで円滑かつ安全に脳死肝移植を遂行することができた。費用負担や責任の所在等、互助件数が増加する中で浮き彫りになっていく課題に対し、明確な指針を策定することが今後の課題である。

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