2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s153_1
肝移植にいたる原疾患には様々なものがあるが、いずれの疾患でも慢性肝不全にいたると妊孕性の低下がみられることがわかっている。肝移植後にはそれらの女性の8割以上で妊孕性の回復がみられるとされる。これまでに国内外から多くの臓器移植後妊娠が報告されており、肝移植後妊娠症例報告数は、腎移植後妊娠についで多い。しかし、臓器移植後妊娠全般において、妊娠中に免疫抑制薬を継続する必要があること、その他合併症に対する治療を要する場合が多いことから、妊娠中管理においては母児ともに様々な懸念がある。これまでの報告では、肝移植後妊娠例の7割以上が健児を得ているが、他の臓器移植後妊娠症例と同様に、早産、児の低出生体重などの頻度が高かったと報告されている。また、妊娠中には、高血圧、妊娠糖尿病などの合併率も、一般の妊娠と比べて高かったと報告されている。このガイドラインでは母児ともに安全な肝移植後妊娠管理を行うため、移植後に妊娠を考えるにあたって準備しておくこと、妊娠中管理において注意すべきこと、出産後の母児ぞれぞれに起こりうる問題やその対応などについて、これまでの国内外のレジストリーや研究報告結に基づき解説する。