2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s158_2
免疫原性の高い臓器の移植である肺移植後の拒絶反応の克服について、マウス肺移植モデルと臨床データから考察する。Balb/cマウス肺をB6マウスに移植し、day 0に抗CD154抗体、day2にCTLA4-Igを投与すると(共刺激シグナル阻害)、その後に免疫抑制は行わずとも、ドナー特異的な免疫寛容が誘導され、day 30の移植肺には制御性T細胞(Treg)が豊富な三次リンパ組織が形成される。この反応は移植後早期に誘導されレシピエント由来の免疫応答が必要である。一方で、Balb/cマウス肺をB6マウスに移植しday30まで低用量のPSLとCsAを投与すると、慢性拒絶を反映した血管気管支周囲のリンパ球集簇と線維化がみられる。これにCTLA4-Igをday30まで追加すると、拒絶は抑制されるが、移植肺内にTregは認めなかった。臨床で用いられるような免疫抑制方法では移植肺にTregは誘導されなかったが、術後早期の共刺激シグナル阻害は豊富なTregを移植肺内に誘導した。また、当科における肺移植症例217例において、術後早期(1か月以内)に急性拒絶(AR)と臨床診断しステロイドパルスを施行したAR発症群96例とAR非発症群121例を比較すると、5年の慢性期移植肺機能不全(CLAD)-free survivalは、AR発症群 57.3%、AR非発症群 71.4%で、AR非発症群で有意に良好であった (p = 0.047)。移植後早期のイベントは移植肺の長期経過に影響を与える可能性があり、新たな術後早期の免疫抑制法の開発や急性拒絶発症後の適切な長期管理の確立が望まれる。