移植
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学童期における長期入院移植待機が引き起こす問題点
石田 秀和石井 良廣瀬 将樹橋本 和久長野 広樹成田 淳
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s199_1

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抄録

我が国における小児心臓移植の待機期間は成人に比べると短いものの、2021年までの国内移植例でのStatus 1待機期間は598±368日であり、乳幼児期だけでなく学童期や思春期における長期待機の影響は非常に大きい。学童期以降の拡張型心筋症症例では、植込み型補助人工心臓装着により、退院および復学しての移植待機が可能であるが、拘束型心筋症のような補助人工心臓装着が困難な病態におけるカテコラミン持続静注療法による待機では、2~3年以上におよぶ入院が必要であり、思春期の長期入院生活がもたらす精神的な問題とともに学業をどのように維持するかという問題も大きい。当院では2022年5月現在、学童期のカテコラミン持続静注療法による待機患者が6名(小学生2名、中学生2名、高校生2名)入院中である。原疾患は、拘束型心筋症3名の他、不整脈源性右室心筋症、大血管転位症、拡張型心筋症である。小中学生は院内学級へ通学しているが、院内学級は義務教育までしか対応しておらず、中学卒業後の学業の維持が問題となる。通信制高校という選択肢はあるが、通信制でも年間数日の登校が原則的に求められるため単位取得や卒業にはハードルがある。今回、学校や教育委員会との連携により他県の公立高校の入学試験を病棟内で行い、オンライン授業を導入して地元公立高校での学習を可能にした症例を経験したことで、特に学童期における長期入院待機が引き起こす問題点を総括し、当院での取り組みを紹介したい。さらに、補助人工心臓治療が困難で、かつ予後が非常に悪い、小児拘束型心筋症における臓器配分の見直しの可能性について、議論の土台を提供したい。

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