移植
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心臓移植待機期間の長期化は待機中死亡の増加と移植後成績の悪化につながる
木下 修中嶋 博之土屋 美代子吉武 明弘中埜 信太郎
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s200_1

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抄録

 2010年の臓器移植法改正まで心臓移植は年間0~11例だった。植込型VADの保険適応は2011年からである。待機患者は予後1年以内と見込まれる重症心不全患者であり、2009年以前は移植数の2倍以上の待機中死亡があった。

 臓器移植法改正後、心臓移植数は年間50例以上にまで増えた。植込型VADの保険適応により年単位で移植待機できる患者が増えたことも加わり、待機中死亡は減少し2010~2015年は年間20人程度になった。心臓移植希望者は増加し、ここ数年は年間200人程度が新規登録されている。その結果、移植待機期間は長期化し続け、今や5年を超え、これから移植希望登録する患者は8年以上になると見込まれる。VAD治療が行えない患者はほとんど移植に至らず、移植を受けられるのはVAD装着患者ばかりである。日本の植込型VAD治療は4年生存率が8割程度で、8年生存率は6割程度になる可能性もあり、移植待機期間の長期化とともに待機中死亡が増えると思われる。実際ここ数年の待機中死亡は年間40人前後に増え、さらに増えることが懸念される。

 心臓移植適応判定時には悪性腫瘍を含めた心臓以外の疾病が移植に不適当でないことを確認しているが、移植希望登録から8年以上も経過すると、適応判定時とは変わっている患者も出てくる。移植が不適当な状態が潜んでいても、気が付かずにそのまま移植が行われてしまえば移植後成績は悪化する。移植時年齢がより高齢になることも移植後成績に影響しうる。en-copyright=

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