移植
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膵移植看護の質向上に向けて~腎移植との比較~
山口 友美伊藤 美樹成田 尚子剣持 敬
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s281_3

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抄録

【はじめに】

当院は膵移植97件と本邦有数の施設であり、膵島移植実施施設となったことから、糖尿病移植医療拠点として果たす役割は大きい。新たに始まる膵島移植看護の構築と共に、膵移植看護の質向上も必要となる。そこで膵移植看護と腎移植看護を比較し、膵移植特有の看護援助について考察を行った。

【目的】

膵移植看護の特徴を明らかにし、膵移植看護の質を向上する。

【方法】

術前後の看護援助内容について膵移植と腎移植とを比較し、膵移植に必要な看護を明確化する。

【結果】

膵移植における代表的な移植後合併症は、術式や移植血管の特徴などから再手術が必要な血栓症や出血、イレウスなど重篤な合併症の割合が高くなっていた。移植後のサイトメガロウイルス抗原陽性率に関しては、腎移植45.9%、膵移植78.8%と有意な差が出ていた。移植術全体の拒絶反応発生率は約7%であり、臓器別に比較しても発生率に有意差はなかった。しかし、拒絶反応発症後のグラフト生着率に注目すると、腎移植の廃絶の割合は10%であるのに対し、膵移植の場合は60%と格段に廃絶に至る確率が高くなっていた。よって、感染症・拒絶反応に対する早期発見や対処の重要性は膵移植の方が高く、患者指導の際には腎移植の場合よりも強調して指導する必要がある。

【結語】

膵移植看護では、術後経過を予測した上での看護実践の提供、その中で予測不可能な合併症に対し、いかに迅速に気づくことができるかが鍵となる。

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