移植
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ドナーのHCV治療後に生体腎移植を施行し、術後にHCV抗体陽性となったレシピエントの一例
小野原 聡白川 浩希奥村 光一郎別府 寛子石渡 亜由美川西 智子小川 俊江阿部 恭知遠藤 真理子若井 幸子
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s283_1

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抄録

【症例】23歳男性。既往歴に特記事項なし。

【現病歴】X年春(22歳時)、学校検診で蛋白尿指摘。X+1年1月に倦怠感、顔面浮腫にて近医受診。血圧200 mmHg以上、Cr 21.87 mg/dLの状態で緊急入院後、血液透析導入となった。腎生検にて糸球体硬化像を認め、悪性腎硬化症と診断。X+1年2月に左前腕内シャント造設し、維持透析開始。X+1年4月、生体腎移植を希望し当院紹介受診。

【経過】ドナー候補の母は精査にてループス腎炎と診断されたため、父へ変更することになった。父の術前検査でHCV抗体(+)、HCV-RNA(+)が判明。レシピエントはHCV未感染であり、父のHCV治療後に腎移植を施行することになった。父のHCV治療終了後3か月間のHCV-RNA(-)を確認し、X+2年5月、父をドナーとした血液型適合生体腎移植術を施行。術前免疫抑制剤はTAC、MMF、MP、Basiliximabの4剤。術後経過は問題なく退院。

X+3年2月、定期外来検査にてHCV抗体の陽性転化を認めたが、HCV-RNA(-)であり、また、ドナーである父もHCV-RNA(-)が継続されている。現在、肝機能は正常で、移植腎機能もCr 1.2mg/dlと安定している。

【考察】HCV治療後のドナーからHCV未感染のレシピエントへ腎提供を行った場合、

腎移植後、約4割のレシピエントにおいてHCV抗体陽性転化することが報告されている。

今回、同様の症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

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