移植
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HIV感染慢性腎臓病患者に対して円滑に生体腎移植術を施行するための多職種連携の重要性
阿部 哲也石井 大輔井村 夕姫野口 文乃北島 和樹和田 達彦竹内 康雄吉田 一成
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s283_2

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抄録

Antiviral therapy(ART)によりHIV感染症によるAIDSでの死亡率は減少した。その一方で慢性期合併症である慢性腎臓病の有病率は上昇している。ARTにより、HIV感染腎移植患者の生命予後も改善しが、日本ではHIVに対する差別や偏見が未だ根強く、腎移植数も少ない。当院で経験した3例から、HIV感染腎移植を円滑に施行するための多職種との連携の重要性について検討した。全例で移植医、腎臓内科医、感染症内科医、肝臓内科医、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士が連携し、医学的問題や社会心理的背景を協議し、共有した。術後拒絶反応なく、CD4+リンパ球数も保たれており、HIVウイルスの検出もなく経過できている。外来でも多職種での情報共有が継続され、腎機能並びにHIV管理の経過は良好である。

HIV感染慢性腎臓病患者にとって腎移植術は選ばれるべき腎代替療法のひとつである。腎移植に際して拒絶反応のリスク回避のための免疫抑制療法の調整や、薬剤相互作用の習熟、社会・心理的など専門的な支援が求められる。自施設でHIV感染患者に対して腎移植医療を安全で円滑に行うためには多職種連携が重要である。

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