移植
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献腎移植後、肝腎嚢胞感染を繰り返した多発性嚢胞腎の一例
西田 翔須田 遼祐大山 雄大南園 京子佐々木 元石川 暢夫岩見 大基
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s283_3

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抄録

【背景】献腎移植は、長期透析から離脱し患者のQOLを高める有効な手段である。一方で患者選定から移植手術に至るまでに与えられた時間は極めて短く、手術適応判断が難しい症例もある。今回、嚢胞感染の既往をもち、献腎移植術後に嚢胞感染を繰り返した症例を経験したため報告する。

【症例】67歳男性。多発性嚢胞腎による慢性腎不全にて20年前に血液透析導入となった。

血液透析期間中は年1回の頻度で嚢胞出血と嚢胞感染を発症し保存的加療で改善していた。

20XX-3年に脳死下献腎移植術を受け血液透析を離脱したものの固有肝・腎嚢胞感染を繰り返した。3年間で合計14回の入院抗生剤治療を行い、外来通院中も間欠的な抗生剤治療を要し、経時的に全身状態の低下を認めた。以上の経過より、感染巣の可及的な摘除を目的として、20XX年に肝嚢胞が集中している肝左葉切除と両側固有腎摘出術を施行した。手術時間は10時間30分で出血量は2000mlであった。術後リハビリを経ながらADLの一時的な改善を認めたが、肝切除断端部膿瘍や尿路感染により全身状態が再度悪化し、最終的には誤嚥性肺炎を併発し術後6か月で死亡にいたった。

【結語】嚢胞感染コントロールが献腎移植後困難となった症例を経験した。本症例のような献腎移植待機患者への腎移植術の適応の可否・判断のタイミングと外科的介入の是非について協議したい。

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