2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s287_1
症例は53歳女性。夫への腎提供希望あり術前精査を施行したところ、造影CTで馬蹄腎を認めた。左右ともに腎動脈は3本、腎静脈は2本であった。点滴静注腎盂造影検査で腎盂・尿管は腹側に位置し、走行異常があるものの独立しており摘出可能と判断し、左腎をグラフトとした。
右側臥位ジャックナイフ体位で、左季肋下・左下腹部に12mm portを挿入し、臍右側にGelport®を装着し、腹腔鏡下に手術を行った。峡部が厚さ13mm、幅43mmであったため、先に尿管及び腎動静脈を切離した。峡部に綿テープを巻きつけて可及的に圧縮し、ボール電極によるソフト凝固でさらに菲薄化させたうえでエンドGIA™トライステープル™ブラックカートリッジを用いて離断した。断端はボール電極によるソフト凝固、組織接着用シートで止血し、閉創した。手術時間は234分、出血量は90mlであった。
術後はドナー・レシピエントともに尿漏など合併症なく経過し、ともに術後14日目に退院とした。現在術後約5か月になるが、両者とも安定して経過している。
馬蹄腎ドナーからの生体腎移植に関する報告は少ない。今回我々は峡部が厚かったにもかかわらず、鏡視下に腎採取術を施行し得た1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。