2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s293_2
近年の免疫抑制療法や周術期管理、合併症対策の向上により、腎移植後生着率は10年90%を凌駕するほどの成績となり長期生着症例が増加している。しかしその一方で、長期生着症例では移植腎機能が維持されたまま合併症により死亡する、DWFG(death with functioning graft)が増加傾向にある事が問題となっている。今回我々は、腎移植後の死亡原因として多い感染症や心血管系合併症の減少を期待して、エベロリムス早期導入によるステロイドフリーレジメンによる免疫抑制療法を行っている。レジメンは、バシリキシマブ・タクロリムス・ミコフェノール酸モフェチル・ステロイドの4剤併用療法にて導入、2週間でステロイド漸減し中止、同時にエベロリムスをadd onするといったレジメンである。mTOR阻害剤であるエベロリムスは、in vitroではあるが血管内皮細胞上で抗HLA抗体の発現を抑制するとの報告もあり、血管内皮細胞障害阻害作用による長期の腎保護を期待する。そして耐糖能異常や高脂血症・易感染性・血栓傾向・骨密度低下等のステロイド関連合併症の軽減からの長期生着・長期生存を目標とする。
今回、高知医療センターで行った腎移植191例のうち、2017年3月以降のエベロリムス早期導入によるステロイドフリーレジメン77例について、生着率・生存率、合併症、de novo DSAの検出率等について検討したので文献的考察も含めて報告する。