移植
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エベロリムス周術期add-onプロトコルの検討
宮内 勇貴杉原 直哉佐伯 佳央里山川 真季河野 玲奈渡辺 隆太野田 輝乙西村 謙一福本 哲也三浦 徳宣菊川 忠彦雑賀 隆史莖田 昌敬
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s293_3

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抄録

【緒言】腎移植領域にエベロリムス(EVR)の使用が保険収載されて約10年が経過した。効果や副作用の報告が散見されているが、決まったレジメンがないのも現状である。今回当院で行っている周術期投与について検討した。【対象と方法】当院で2011年以後に行った腎移植症例103例のうち、EVRを未導入で現在も使用していない31例(A群)と、周術期に投与(ミコフェノル酸モフェチル(MMF)にadd-on)した37例(B群)を比較した。多くの症例が12日目にEVR1.5㎎/日で追加し、MMFを1000mgに減量した。【結果】A群にのみ献腎症例が4例あった。透析期間はA群で有意に長かった。免疫学的なリスクに群間差はなかった。カルシニューリン阻害剤はじめ、導入期免疫抑制レジメンに群間差はなかった。B群の12人(32.4%)が中央値9.7ヶ月でステロイド離脱を行っており、有意に多かった。術後の脂質代謝異常に群間差はなく、内臓脂肪蓄積や筋肉量の変化なども有意差はなかった。ただし、B群は23人(62.2%)で脂質代謝異常に対する投薬を受けており、有意に多かった。術後B群の1例でリンパ嚢腫に対して治療が必要であった。蛋白尿は有意にB群に多かったが、腎機能、拒絶発生率、生着率に有意な差はなかったが、de novo DSAの出現はEVRの内服で抑えられた。【まとめ】EVRは適切な管理を行えば代謝異常もコントロールでき、副作用も許容できるため有用と考える。さらなる症例の蓄積と確立したレジメンの報告が待たれる。

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