2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s320_3
【背景】Solid Phase Assay(SPA)により腎移植前に低用量のドナー特異的抗体(DSA)を判定できるようになり、DSA陽性ハイリスク患者に対して脱感作療法施行後に腎移植を行っている。ただしFlow Cytometry Crossmatch(FCXM)陰性のDSA弱陽性患者に対しては脱感作療法に関して明確な基準が決められていない。この患者に対して脱感作療法の効果、副作用に関して検討した。【方法】当院の2014年3月から2021年12月までの血液型一致、FCXM陰性、SPAのDSA弱陽性(MFI:500~9000)患者52例(男性28名、女性24名、年齢54.6±12.0)を対象とした。DSA弱陽性に対して血漿交換法を行うことでの治療効果と手術時間、出血量の副作用に関して検討した。【結果】DSA弱陽性に対して血漿交換0-1回施行した例が15名、2回以上が37名であった。MFIが高いほど血漿交換回数が多かった。血漿交換を2回以上行った例に関しては手術時間においては有意差を認めなかったが(0-1回:249±45.3分、2回以上:280±65.9分、p=0.105)、出血量に関しては有意差を認めた(0-1回:128±115ml、2回以上:365±465ml、p=0.0192)。血漿交換の回数によって術後の拒絶反応には有意な差を認めなかった(0-1回:21.4%、2回以上:34.2%、p=0.375)。【結語】MFI値に応じた回数の血漿交換を行うことで、MFIが高くリスクのある患者に対しても拒絶を抑える可能性がある一方で、手術時間には差はないが、術中出血リスクが高まることが示唆された。