2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s325_3
【はじめに】
抗体関連型拒絶反応は移植臓器廃絶の要因として,その予防と治療は重要な課題である.2018年に臓器移植後の抗HLA抗体測定が保険収載され,当科では定期的に抗HLA抗体測定を実施している.膵移植後,腎移植後のde novo抗HLA抗体産生につき検討した.
【対象と方法】
2020年3月までに移植を受け,外来フォローアップしている膵移植後,腎移植後患者178 名 (膵腎同時移植 56例,膵単独移植(腎移植後膵移植を含む)12例,腎移植後110名)を対象とし,抗HLA抗体の産生状況について,患者背景,術後因子,グラフト生着などとの関連性を検討した.
【結果】
平均フォローアップ期間は3.4±2.4年であった.178例中75例 (42.1%) で抗HLA抗体産生を認め,うち17例 (9.6%) は抗ドナー特異的抗体 (DSA) であった.術式別のDSA陽性率は,腎移植後3例(2.7%),膵単独移植6例(50%),膵腎同時移植8例(14.3%)であり,腎移植に比較して膵移植で有意に高値であった(p<0.01).
DSA陽性群(n=17)とDSA陰性群(n=161)の2群比較では,陽性群に輸血歴を多く認め (12例 vs 57例, p<0.01),免疫抑制薬減量例の割合が高かった(64.7% vs 39.8%,p=0.069).抗体関連型拒絶反応の発症は陽性群で有意に多かった(35.3% vs 3.1%, p<0.01).移植臓器別の3年Death censoredグラフト生着率は,腎移植では陽性群90.9% vs 陰性群 99.2% (p=0.024),膵移植では陽性群 56.2% vs 陰性群 94.1% (p<0.01)といずれも陽性群で低値であった.
【結語】
DSAの産生は,膵移植,腎移植いずれでもグラフト生着率を低下させるため,適切な術後管理と免疫抑制療法が重要であると考えられる.