2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s353_1
【背景・目的】2019年4月より中学校の道徳が教科化され,7社の教科書に「生命の尊重」の題材として臓器移植が掲載された。しかし,その実態は明らかにされていない。本研究の目的は,全中学校を対象とした授業実施の現状を把握し,実施率を100%に使づける方策の開発に資することである。【方法】対象は全中学校10,189校である。各校の道徳推進教師宛にDMを送り,書面中のリンクからweb調査に回答していただく形式とした。調査項目は,使用教科書の出版社名,授業実施状況,授業実施までの準備,使用した資材,授業の工夫,websiteに関する要望,実施満足度,今後の実施意向などであった。分析はSPSSを用いた。【結果と考察】授業実施率は,2019年度48.8%,2020年度52.3%,2021年度60.1%と増加していた。2021年度は,移植医療が掲載されている教科書が66.7%で採用され,その90.1%の教諭が授業を実施していた。授業実施者の満足度91.3%,次年度の実施意図は90.1%と高かった。したがって,教科書に掲載されることの重要性が示唆された。授業実施者と未実施者の2群に分けて両側t検定を実施したところ,実施者は未実施者に比較して,統計学的有意に意思表示行動ステージ,および保険証への意思表示率が高かったことから,授業実施をきっかけに,意思決定にも向き合うことが示唆された。