移植
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bilayer hernioplastyを施行し良好な長期予後を得た腎移植後鼠経ヘルニアの一例
石堂 展宏俣野 貴慶大久保 悠祐河本 慧久保田 哲史門脇 嘉彦
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s393_1

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抄録

腎移植患側に発症した鼡径ヘルニアは,患者のQOLを低下させる要因となる。治療は外科的修復術しかないが一般に敬遠されがちである。腎移植手術は一般的に,右或いは左の腸骨窩に移植腎が配置され,移植尿管は後腹膜腔を走行し膀胱前壁側と吻合される。移植尿管と鼠経管後壁とは近接した位置関係となり,また術後の癒着のため移植尿管の同定は通常容易ではない。そのヘルニア修復術では,術中操作による移植尿管・膀胱の損傷,術後の再癒着等による移植尿管狭窄からの排尿障害,留置したmeshと移植尿管が接し起こる遅発性尿管壊死などが問題となる為である。従来Lichtenstein法は腹膜前腔の剥離を要しないため比較的安全とされ第一選択と考えられているが,解剖学的には根治的でないため,症例によっては再発を来し,また慢性疼痛も多いとされる。さらに臓器移植後の患者では,術後のステロイドの定期使用や免疫抑制剤の使用が必須であるため創傷治癒遅延によるヘルニア再発リスクも高いとされている。一旦再発すると修復はさらに煩雑となり合併症のリスクも増大すると考える。今回我々は、腎移植患側に発症し徐々に増大した鼡径ヘルニアに対し、Ventralex STを用いたbilayer hernioplastyを施行し、術後6年間,合併症なく良好な長期予後を得た症例を経験した。ヘルニア門の位置や大きさなど症例ごとの詳細な検討が必要ではあるが,鼡径管内および腹膜前腔の比較的小範囲の剥離が可能な症例では、癒着の少ないmeshを併用するbilayer hernioplastyは,より根治的で再発や慢性疼痛の少ない有用な方法と確認できたため報告する。

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