2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s393_2
症例は77歳男性。原疾患不明のCKDに対し妻をドナーとした先行的生体腎移植を施行。術前尿量は800−1200ml/日、術中膀胱容量は200mlであった。術後の経過に問題はなく、10日目に尿道カテーテルを抜去した。術後19日目に排尿困難が出現、タムスロシン投与を開始した。術後21日目39度の熱発、血清Cr0.95→1.2mg/dlと腎機能増悪、炎症反応上昇、膿尿、CTにて移植腎腫大を認め、腎盂腎炎と診断した。抗生剤加療にて軽快し、術後28日目に退院となった。術後31日目に再度腎盂腎炎にて再入院となった。排尿時膀胱造影施行したところ、膀胱尿管逆流の所見があった。前立腺は35ccと軽度肥大はあるも残尿は認めず。膀胱尿管逆流が軽度であること、前立腺肥大を認めることから、侵襲性を考慮し経尿道的前立腺切除(TUR-P)施行の方針とした。術後、排尿状態は改善した。以後、腎盂腎炎、腎後性腎機能障害の再発なく経過している。生体腎移植後、膀胱尿管逆流はしばしば見られる合併症である。また、前立腺肥大症は高齢男性がレシピエントの場合、高頻度で併発する。しかしながら、移植前の末期CKD、もしくは透析施行中で、尿量が低下している段階では、自覚症状がマスクされており、生体腎移植後の尿量増加に伴い顕在化し、影響を及ぼす可能性が示唆される。今回我々は生体腎移植後膀胱尿管逆流に対してTUR-Pを施行し膀胱尿管逆流の改善により、腎後性腎不全を解除した一例を経験したため報告する。