2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s129_2
移植周術期の細菌感染症の予防には、移植前スクリーニングと適切な周術期予防投薬が挙げられる。臓器別の周術期抗菌薬に加えて、ドナー臓器の細菌培養結果やレシピエントの耐性菌検出歴、予防投薬の有無、免疫抑制状態を参考に予防投薬を選択する。
固形臓器移植患者においては、移植時から免疫抑制が始まることが多く、周術期に問題となるのは、日和見病原体よりもドナー由来感染症と院内感染である。濃厚な医療曝露(抗菌薬含む)と関連して、薬剤耐性菌感染症が多いとされる。抗菌薬投与はC. difficileのリスクも上昇させる。移植臓器を含む手術部位感染症に加え、血管内カテーテル感染、肺炎、尿路感染症、腹腔内感染症などの鑑別を進める。経験的治療としては、まずは抗緑膿菌作用を有するβラクタムの投与を行い、加えて想定される原因菌に応じて抗MRSA薬、耐性GNRを標的とした2剤目の抗緑膿菌薬、細菌以外については、抗真菌薬、ST合剤、抗ウイルス薬の投与を検討する。これら抗微生物薬を投与する際は、免疫抑制剤の調整や相互作用にも注意が必要である。拒絶やGVHDなど感染症以外の疾患の可能性を考慮することも重要である。