移植
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当院における高齢心臓ドナーの現状
武城 千恵辻 正樹石田 純一網谷 英介波多野 将安藤 政彦嶋田 正吾小野 稔
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s150_1

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抄録

【目的】近年高齢ドナーからの臓器移植提供の機会も増えてきているが、予後に与える影響を示したデータは少ない。当院における高齢心臓ドナーからの移植後成績を検討した。【方法】当院で移植後管理中の症例を対象とし、渡航移植、移植時15歳未満、移植1年未満の症例は除外した。【結果】対象は163例(男性レシピエント71.6%)、レシピエント年齢は44(33-52)歳、ドナー年齢は46(36-54)歳であった。ドナー年齢を60歳で区切り比較すると、高齢ドナー群ではBrinkman index(P=0.013)が有意に高かったが、心機能やドナー由来の冠動脈病変(初回冠動脈造影で≧50%の狭窄)の割合に有意差は認めなかった(心室中隔壁厚P=0.39、左室後壁厚P=0.55、左室拡張末期径P=0.99、左室駆出率P=0.18、冠動脈狭窄P=0.76)。移植後経過では、有意差はないものの、細胞性拒絶の発症割合は少ない傾向があり(3年以内:P=0.18、5年以内:P=0.17)、移植1年での冠動脈病変の増悪が多い傾向であった(P=0.097)。また移植1年でのBNPは有意に高い結果であった(P=0.0021)。長期予後に関してKaplan-Meier法で死亡率や悪性腫瘍発症率に有意差を認めなかった(P=0.49、P=0.77)。【結論】高齢心臓ドナーでは冠動脈病変の進行に注意が必要と考えられるが、細胞性拒絶は少ない傾向がみられ、また長期予後や悪性腫瘍の発症率にも影響は少ないと考えられた。

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