2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s219_2
肺移植医療は高度な技術と知識を要す。「肺移植医」となる前に「呼吸器外科医」となる必要がある。一般呼吸器外科は消化器や心臓外科に比較すると緊急手術が少ないが、脳死肺移植はすべて予定外(緊急)手術であるから、肺移植医兼呼吸器外科医を志す場合と一般呼吸器外科医を志す場合では、異なる心構えが必要な可能性がある。私自身は将来肺移植医療に携わるとは全く想像せず呼吸器外科医になることを決めたが、その後肺移植を研究や臨床両面から学び現在肺移植医として勤務している。肺移植医療では、一般呼吸器外科と異なり、非常に多くの職種との連携が必須であることを実感する日々である。外科医という役割において手術手技はもちろん重要であるが、その後の集中治療管理は手術以上に複雑で、重要である。集中治療医や理学療法士を始めとした多くの職種との協力無しには成功し得ない。外科手技に加えて、他職種への敬意と協調性が「肺移植医」には求められる。一方、脳死肺移植は予定外手術であることから、発生した場合に急遽編成される臓器摘出チームとレシピエントチームの誰もが多少の差はあれ私的予定の変更を余儀なくされる。この際にも各人の協調性と柔軟な対応が必要となる。肺移植は協調と役割分担によって成立する医療である。肺移植医には、外科医として与えられた役割を全うする能力に加えて、科内や他職種と協力する能力が必要である。