2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s245_2
【目的】腎植後に新たに産生されるドナー特異的HLA抗体(以下de novo DSA)は、移植腎の予後を悪化させるリスクがある。近年、自己免疫反応を予測する新しいツールとしてPIRCHE(predicted indirectly recognizable HLA epitopes)アルゴリズムが開発された。本研究では、腎移植後de novo DSA発生の予測におけるPIRCHE scoreの有用性について検討した。【方法】2009年1月から2021年12月までに当院で生体腎移植を施行した患者のうち、HLAデータが利用可能であった227名を対象とした。PIRCHE scoreを含む臨床病理学的因子とde novo DSA発生リスクを比較検討した。【結果】対象患者の観察期間の中央値は62.2か月であった。227名のうちde novo DSA陽性患者は18名(7.9%)であった。De novo DSA陽性患者のPIRCHE scoreの中央値は79であり、de novo DSA陰性患者のPIRCHE scoreの中央値は52であった(p=0.034)。PIRCHE score=61をカットオフ値としてLow PIRCHE群とHigh PIRCHE群の2郡に分け比較したところ、Low PIRCHE群では10年間のde novo DSA非発生率が96%であったが、High PIRCHE群では88%であった(p=0.028)。多変量解析の結果でも、PIRCHE scoreは独立した腎移植後de novo DSA発生の予測因子であった(p=0.048)。【結論】PIRCHE scoreは腎移植後de novo DSA発生を予測する有用な予測因子であり、免疫抑制剤の調整やde novo DSA発生の予防に役立つ可能性が示唆された。