2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s292_1
既存治療ではコントロールが難しい激しい痛みを伴う慢性膵炎、遺伝性膵炎、膵動静脈奇形などに対する膵全摘術および自家膵島移植(TPIAT)は,痛みの軽減を図りながら術後の膵性糖尿病を緩和し,良好な血糖コントロールを実現する治療法として,欧米を中心に行われている。米国などでは通常診療の位置づけとなっている。しかし,日本ではこれまでに行われた実施数は限られており、いまだ保険診療にはなっていない。近年、我々は単施設の臨床試験として5症例のTPIATを施行した。その結果、すべての患者で疼痛スコアは改善し、すべての患者で12か月間移植片の機能を維持し、安定した血糖コントロールを得た。1名の患者はTPIAT後2か月目からインスリン注射不要で経過するなど、欧米の成績と遜色ない結果であった。TPIATは、日本人患者においても、大幅な疼痛緩和と良好な血糖コントロールにより、患者のQOLを向上させる治療法となりうることが示唆された。そこで、我々はTPIATを保険診療とすべく、多機関共同の臨床試験を計画した。日本の制度上、TPIATのうち膵全摘術は有効性が認められた保険診療であり、一方自家膵島移植は第三種再生医療かつ保険外診療となる。自家膵島移植の医療技術としての保険診療化を目的に、先進医療制度を用いて有効性と安全性を示すこととし、2022年より臨床試験を開始したため報告する。