摂食障害の倫理的課題が民事訴訟,刑事訴訟の場に顕れることがある.
民事訴訟の場では,摂食障害のある入院患者に身体拘束を行った場合に,損害賠償請求訴訟が提起され,損害の公平な分担として,身体拘束の違法性が問題となる.この点,身体拘束の必要性に対する判断においては,医療者の裁量が認められている.
他方,刑事訴訟の場では,摂食障害の患者が万引きをした場合に,刑罰を加えることやその内容についての妥当性が問題となる.この点,刑罰の正当化根拠として,犯罪者が再び罪を犯さないようにするためという考え方を踏まえると,こうした場合に刑罰を加えるのは相当でないようにもみえるが,実際には,こうした場合に,無罪となった裁判例は認められなかった.しかし,摂食障害の患者については,執行猶予期間中に再び万引きをした場合においても,再度の執行猶予と保護観察処分が付され,社会内処遇が行われる傾向にある.