2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s294_2
【目的】原発性移植片機能不全(primary graft dysfunction: PGD)と急性腎障害(acute kidney injury: AKI)は肺移植の死亡率の上昇に関連している。PGDはAKIの一因となるがPGDとAKIの重症度との関連は十分に検討されていない。我々はPGDのグレードとAKIのステージングとの関連、およびAKIがその後の慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)の経時変化に与える影響について解析した。
【方法】2018年1月から2022年6月までの単施設の肺移植データベースの後方視的検討を行った。AKIはKidney Disease: Improving Global Outcomes基準に従い疾患の重症度を比較し生存率を評価した。
【結果】計206名の患者においてPGDグレード0、1、2、3が各々119名(57.8%)、25名(12.1%)、34名(16.5%)、28名(13.6%)、AKIステージ0、1、2、3が各々96名(46.6%)、47名(22.8%)、27名(13.1%)および36名(17.5%)がであった。PGDグレード3の患者28人中21人(75.0%)がAKIステージ3であった。PGDグレードとAKIステージの間には有意な相関を認めた(p<0.001)。また、肺移植後3、6、9、12ヶ月の時点で、AKIステージとCKDの糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)カテゴリーとの間に有意な相関があった(p<0.001)。すべてのAKIステージにおいて、GFRカテゴリーは術後時間が経過するにつれて悪化した。
【考察】PGDグレードはAKIステージと有意な相関があり、AKIステージはCKDのGFRカテゴリーと相関があった。