2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s309_1
【背景】ヒト免疫から免れるための遺伝子改変は、異種移植の成功のカギとなる。抗原提示細胞によって免疫応答を惹起させる、異種抗原の情報はない。本研究では、ブタ細胞を貪食した樹状細胞(Dendritic Cell; DC)からHLA-class IIに提示される異種抗原の探索を行った。【方法】ヒト末梢血CD14+ monocyteを、放射線照射したブタ血管内皮細胞(PAEC)とともにIL-4/GM-CSFで4日間、IL-1β/TGFαで2日間培養したものをDCとして用いた。細胞破砕しanti-human HLA-class II DR 抗体で免疫沈降したサンプルからpeptideを抽出し、nanoLC-qTOF/MS/MSで測定した。peptide情報から得られるたんぱく質同定にはDIA-NNを使用した。【結果】PAECを貪食し分化したヒトDCは、T細胞を増殖させていた。PAECを貪食させたDCから、HLA-DRを標的に免疫沈降したところ、いくつかの異種抗原由来ペプチドが同定できた。【考察】Indirect alloresponseを強力に誘導する異種抗原由来ペプチドが、必ずしもその抗原に対する抗体産生へと結びつくわけではないため、本研究で同定された異種抗原の重要性については未知の部分がある。しかしながら、アロ移植でも制御しきれないIndirect alloresponseが異種移植でも発生する可能性は高い。本研究で得られた新たな異種抗原は将来の遺伝子改変やモニタリングに重要であることが考えられる。