2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s339_1
【現病歴】症例は58歳男性.妻をドナーとした生体腎移植を施行し,術後16日で退院.術後19日目に右下腹部痛と右大腿の疼痛を伴う皮疹を主訴に受診され,CTでは明らかな腹痛の原因は特定できず,経過観察目的に緊急入院となった.【入院後経過】右大腿部皮疹はVZV感染を疑いビダラビン軟膏塗布を開始.入院時には限局した小水泡を伴う紅斑であったが,徐々に拡大傾向を認めたため,第2病日からアシクロビル点滴投与を開始.その後腹痛は改善傾向となるも,皮疹は顔面,臀部,体幹へと拡大し,色調も暗黒色へ変化していった.第5病日にCT再検したところ,新たに両肺底部に浸潤影の出現を認め,皮疹は水疱を伴わない黒色病変へと変化しており典型的なVZV感染症の皮疹とは異なったため,皮疹の形態からKaposi肉腫も鑑別にあげ,免疫抑制剤を減量した.第7病日に皮膚生検を施行.アシクロビル点滴を継続していき,第12病日頃から皮疹は改善傾向に転じた.第16病日でアシクロビル点滴終了し,第19病日退院となった.病理結果ではVZV感染症に特徴的な多角巨細胞の出現を認め,HHV-8 PCRは陰性であったため,一連の皮疹はVZV感染症によるものと考えられ,症状経過から全身播種を伴う麻疹であったと第一に考える.【結論】移植後免疫抑制患者における皮膚感染症は多様であり,診断に難渋する症例も少なくない.中には致死的経過となる病態もあるため,他科と連携しつつ迅速に対応していくことが肝要である.