移植
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移植腎廃絶後の脳死下膵腎同時移植の1例
坂田 純小林 隆三浦 宏平石川 博補廣瀬 雄己安部 舜河内 裕介田島 陽介市川 寛島田 能史若井 俊文池田 正博田崎 正行齋藤 秀和
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s341_2

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抄録

【緒言】移植腎廃絶後の膵腎同時移植(SPK)の際には前回の移植腎グラフトが右腸骨窩に残存し,膵移植においては移植腎摘出の必要性や膵グラフトの移植部位に対する慎重な判断が必要となる.今回,生体移植腎の機能廃絶後に脳死下SPKを実施した1例を経験したので報告する.【症例】55歳,女性.13年11か月前に生体腎移植を実施したが,慢性拒絶反応により1年8か月前に血液透析再導入となった.今回,1型糖尿病,慢性腎不全に対して脳死下SPKを実施した.中下腹部正中切開で開腹し,右後腹膜腔の前回の移植腎グラフトを確認した上,右総腸骨動静脈を各々確保した.大動脈/下大静脈~左右総腸骨動静脈分岐部~右内外腸骨動静脈分岐部にかけてを,広範囲に剥離・露出した.前回の移植腎グラフトが右外腸骨動静脈に吻合されていることを確認した.この時点で,血管吻合時の動静脈遮断ならびに移植膵グラフトのスペース確保が可能であり,移植腎グラフト摘出は不要と判断した.膵グラフトは膵頭部を尾側に配置し,グラフト門脈と右総腸骨静脈,グラフト動脈と右総腸骨動脈を吻合した.グラフト十二指腸と回腸との側々吻合,回腸・回腸の側々吻合を行った.術後1年5か月を経過し,膵・腎グラフト機能は良好である.【結語】右腸骨窩の移植腎廃絶後のSPKの際の膵移植においては,右腸骨動静脈を十分に露出した上で,前回の移植腎摘出の必要性や膵グラフトの移植部位を判断することが肝要である.

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