移植
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実際の臨床データより機械学習モデルを作成する;日常診療に役に立つツールを目指して
平井 敏仁岩藤 和広木島 勇大木 里佳子尾本 和也清水 朋一石田 英樹高木 敏男
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s180_2

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抄録

医師は日常診療において、患者の病歴、身体所見、臨床データ、画像データなどから得られる情報を総合的に捉えて判断を下す。多くの場合、その根拠として用いるのは過去の後ろ向き研究や臨床試験における最適化された集団での統計データである。しかし、現実社会の集団にはInclusion / Exclusion criteriaは存在せず、研究の上で考慮されなかった因子が混在していて理想化された線形な統計法則は必ずしも当てはまらない。機械学習は実臨床データと実際に起こったアウトカムから複数の因子の重み付けを行うことで、より柔軟に目の前の患者に起こり得る状況を予測することを目指している。我々は自施設のデータを元にして、いくつかの機械学習モデル作成を試みた。ドナーとレシピエントの術前データから心停止後腎移植の長期予後を推定するモデル、ドナーの術前検査所見とCT volumetryの結果から提供5年後のドナー腎機能を予測するモデル、ドナーとレシピエントの推定HLAアミノ酸ミスマッチ数からde novo DSA発症リスクを予測するモデルなどを作成し、自施設内のvalidation cohortで行った検証である程度良好な精度を得ている。米国ではUNOSデータなどを用いてより幅広い患者群で適応可能なモデルが数々提唱されているが、人種や医療システムなどが本邦とは背景が大きく異なる。今後は多施設データを元にして、本邦での日常臨床に有用なモデルを確立することが望まれる。

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