2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s181_1
腎移植後には様々なイベントが発生する。短期的には急性拒絶や手術の合併症などがあり、長期的には慢性拒絶や感染症、心疾患、発癌などが考えられる。これらのイベントの発生の有無は、データさえ揃えば機械学習で予測可能である。また時期を問わず腎機能喪失や死亡等のイベントも予測できる。 イベント予測のためのデータには、1) 移植前から存在する性別や原疾患や術前検査などの時間的変化を伴わない「静的データ」、2) 移植後に生ずる免疫抑制療法や血圧や体重の変化や加齢などの「動的データ」、3) 偶然性に支配されるNon-Adherenceや感染の発症や外科的治療などの「マルコフ性のあるデータ」がある。マルコフ性とは、未来の状態が過去の状態に依存せず現在の状態のみで決まり、過去のデータからの予測が困難な偶発的な性質を指す。どの様なイベントもマルコフ性を有する要因にある程度影響されるため、100%の予後予測は困難と言え、移植後に未知の外乱が生じて予後が変化し得る。 これらを踏まえ、移植腎の拒絶発症から5年後のCKD stageの悪化の有無の予測、腎移植後のde-novo DSAの発生の予測と検証について述べて、予後予測の実例を提示する。あわせて文献的に報告された腎移植患者の予後予測について考察し、腎移植患者の予後予測の研究の指針を提示したい。