移植
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腎移植後患者のCOVID-19感染とT細胞免疫の調査
渡邊 淳弘坂井 寛三枝 義尚長ケ原 一也荒田 了輔箱田 啓志今岡 祐輝中野 亮介清水 誠一田原 裕之大平 真裕井手 健太郎田中 友加小林 剛大段 秀樹
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s301_2

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抄録

【Introduction】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年末からわずか数ヶ月で世界的なパンデミックとして流行した。固形臓器移植レシピエントはCOVID-19感染と重症化のハイリスク群とされるが、患者の免疫に与える影響は明らかにされていない。今回当院で腎移植を施行した患者がCOVID-19に感染した際のT細胞免疫を調査することとした。【Method】当院で腎移植を受け、2023年4月~2024年5月の間にCOVID-19 PCR検査で陽性となり、入院加療を行った患者を対象とした。入院後に採血した血液サンプルを用い、末梢血中のT細胞をフローサイトメトリーで分析した。【Result】期間中に7例の患者を入院させた。男性3人、女性4人で、年齢中央値は53歳 (37~73歳)であった。全例でリンパ球減少が認められた。CD8陽性T細胞はEffector Memory T(TEM)/Effector memory cells re-expressing CD45RA(TEMRA)への分化が進んでいたのに対し、CD4陽性T細胞はTEM/TEMRAへの分化は少なかった。しかし、一部の症例ではCD4陽性TEMRAの増加が見られた。【Discussion】全例でリンパ球減少を認め、COVID-19感染に関する既報通りであった。CD4陽性TEMRAの増加はCOVID-19感染患者の一部に特徴的な所見で、CD8陽性T細胞が枯渇した際に増加するとの報告がある。免疫抑制剤投与中の患者はT細胞が疲弊しやすく、その結果COVID-19感染でCD8陽性T細胞が減少、代償的なCD4陽性TEMRAの増加が確認されやすいのかもしれない。

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