移植
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当科における膵臓移植後の真菌感染症の検討
田中 佑一野口 浩司新垣 滉大椛 朱梨久保 進祐久留 裕加来 啓三岡部 安博中村 雅史
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s341_2

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抄録

【目的】膵移植後の真菌感染症は臓器生着率、患者死亡率に影響するが、抗真菌剤の予防投与を支持するエビデンスは限られており、予防投与を行うことの有用性は明らかでない。ドナー由来の真菌とレシピエントの真菌症との関連及び抗真菌薬の予防投与の有用性を明らかにする。【方法】2015年から2024年までに当科で行った膵移植57例を対象に、術後半年以内の真菌感染症を後ろ向き研究で検討した。2023年4月からの10例は全例でミカファンギンの予防投与を行った。臓器保存液あるいはドナーの十二指腸液の培養よりカンジダが検出されることと真菌症の発症の関連を検討した。【結果】当科で行った膵移植57例のうち11例に真菌症を認めた。ドナーの十二指腸培養を行った27例のうち18例からカンジダを検出した。臓器保存液あるいは十二指腸液のいずれかの培養からカンジダを検出した場合、26%が真菌症を発症した。保存液と十二指腸液いずれの培養も陰性の場合と比較し有意に高かった(ハザード比 4.86, p値=0.01)。また、抗真菌薬の予防投与開始前は真菌症の発症率が21.3%であったのに対して予防投与開始後の10例で真菌症の発症は認めなかった。【結論】真菌はドナーの十二指腸液培養から高率に検出され、レシピエントの真菌症に関与していること、膵移植後の抗真菌薬の予防投与が有用である可能性が示された。

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