2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s344_2
緒言:肝移植において、機械灌流法は臨床応用の段階にあり、有効性が報告されている。治療的機械灌流の目的は臓器保存環境の最適化であり、体内外での機械灌流により臓器無灌流状態を排除したischemia free liver transplantation (IFLT)法はその究極的な形態の一つである。この方法はGuangzhouグループにより開発され、臨床研究が行われてきたが、技術的要求が高く、基礎研究モデルは未確立である。我々は、ラットIFLTモデルの開発に成功しており、改良により良好な成績を達成したのでここに報告する。方法:ドナー、レシピエントともWister Rat (250g, オス)を用い、灌流形式は経門脈的冷温酸素化機械灌流とした。ドナー肝血流を維持しながら、脾静脈より灌流カテーテル、肝下部下大静脈より排液カテーテルを挿入し、血流遮断と同時に機械灌流を開始し、機械灌流下に摘出および体外保存を行った。レシピエントの肝全摘後、機械灌流下に肝上部下大静脈と門脈を手縫い吻合し、血流再開と同時に機械灌流を停止した。結果:灌流液を冷温細胞外液、保存時間を短時間 (臓器摘出後すぐにレシピエント手術を開始)としたIFLTにおいて、全例でレシピエントの生存が得られた。考察:IFLTは将来性の高い機械灌流法であり、当モデルはその基礎研究に寄与しうるものと考えられる。