移植
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術前の固有腎生検にて菲薄基底膜病を指摘された生体腎移植ドナーの1例
土山 彩華倉田 博基迎 祐太北村 峰昭松尾 朋博大庭 康司郎望月 保志山本 泉牟田 久美子西野 友哉今村 亮一
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s398_2

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抄録

症例は62歳、女性。従兄の生体腎移植ドナー候補として当科を受診した。術前検査にて糸球体性血尿を指摘された。有意な蛋白尿はなく、血清Cr 0.56 mg/dl、eGFR 83ml/min/1.73mm2と腎機能は良好であった。画像検査にて器質的疾患は否定的であり、固有腎生検を施行した。病理学的に糸球体基底膜菲薄化が指摘され、菲薄基底膜病およびアルポート症候群が鑑別に挙がった。遺伝子検査ではINF2変異を指摘されたが、アルポート症候群の原因遺伝子変異は同定されなかった。尿検査では蛋白尿なく、病理学的に糸球体基底膜菲薄化のみであり、生体腎移植を施行する方針となった。レシピエントは72歳、男性、原疾患は低形成腎にて血液透析導入後1年11か月目に生体腎移植を施行した。現在移植後1.5年を経過しているが、移植腎機能は安定しており、顕微鏡的血尿、有意な蛋白尿は認めていない。またドナーは、血清Cr 0.95 mg/dl, eGFR 46.17 ml/min/1.73mm2であり、蛋白尿はなく、軽度顕微鏡的血尿を認めるのみである。

 顕微鏡的血尿を指摘された生体腎移植ドナー候補に固有腎生検ならびに遺伝子検査を施行し、菲薄基底膜病の診断のもとに生体腎移植ドナーとして腎採取施行した。ドナー、レシピエントともに経過良好であるが、今後蛋白尿、腎機能障害の有無に留意して慎重に経過観察を行う必要があると考えている。本症例に関して文献的考察を加えて報告する。

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