抄録
【はじめに】膝伸展筋力や股外転筋力測定については簡易な測定方法が考案され,その再現性が報告されている。しかし,膝伸展筋力と同様に多くの動作との関連が高いと思われる股伸展筋力においては,その定量的評価にはいまなお高価な測定機器および複雑な操作を要し,広く臨床応用することは困難であると考えられる。そこで我々は,固定用ベルトを使用したハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)とpick up walker を用いた簡易な股伸展筋力測定方法を考案し,その再現性を検討したので報告する。【対象と方法】対象は健常者および運動器疾患を有しない患者18名(年齢44.1±22.2歳,身長160.3±8.3cm,体重56.1±12.5kg)で,男性6名11脚,女性12名24脚であった。なお,腰部および下肢関節痛を有する場合は対象から除外した。測定にはアニマ社製μTasMF-01を用いた。測定方法は,ベッド上背臥位にて股関節30°屈曲位,股関節内外転・内外旋中間位,膝関節60°屈曲位でベッド上に踵を接地した肢位とし,pick up walker を骨盤下肢上に置いた。その後,μTasMF-01のセンサーパッドを大腿遠位部後面にあて,固定用ベルトを鉛直方向にpick up walker に連結した。予備テストにおいて20kg以上の測定値を示す場合,徒手的に殿部挙上を抑制することが困難であったため,骨盤ベルトで固定することとした。測定は試技を1回施行後,各脚2回実施した。各測定の間隔は1分以上あけて,約5秒間の最大努力による股伸展運動を実施し,このうち最大値を測定値として採用した。なお測定に際して,検者は大殿筋の収縮を確認し,また体幹の伸展を伴わないように留意した。検者間の再現性検討のために,男性(A),女性(B)各1名の検者が日を変えて測定した。また,検者内の再現性検討のために,検者Aが1回目の測定施行数日後に2回目の測定を行った。分析方法は,検者間および検者内再現性についてWilcoxonの符号付き順位検定,および級内相関係数(ICC)を用いて検討した。有意水準は5%とした。【結果】等尺性股伸展筋力値は,検者Aが1回目25.1±13.2 kg,2回目24.2±12.1kg,検者Bが24.7±13.0kgであった。検者間の測定値に有意差は認められず,ICCは0.964と良好であり,また,検者内の測定値においても有意差は認められず,ICCは0.964と良好であった。【考察】臨床的に身近なpick up walker と比較的安価で簡易に測定可能なμTasMF-01を用いて等尺性股伸展筋力の測定方法を考案した。本方法で測定した股伸展筋力は高い再現性を有し,簡易で定量的な股伸展筋力の測定が可能になり,臨床上有用な情報が得られることが示唆された。しかし,測定された筋力には大殿筋の他に,膝屈筋群および脊柱起立筋などの背筋群による活動も含まれると思われ,測定に際してはこの点を十分考慮する必要があると考える。