抄録
ニコチン依存症はWHOのICD-11 に収載された疾患であり、DSM-5-TRにもタバコ使用症(tobacco use disorder)が定義されている。WHOの「たばこ規制枠組条約(FCTC)」第14条は、タバコ使用の中止と依存症治療を推進する包括的施策を求めている。日本では「健康日本21」などで喫煙率低減目標が掲げられ、保険禁煙治療も一定程度整備されているが、安定財源の確保、公的保険適用の範囲、禁煙支援サービスの拡充はいずれも不十分である。とくに、認知行動療法や動機づけ面接などの心理的支援、禁煙電話相談やオンライン支援、禁煙外来受診を促す公衆衛生キャンペーンは、欧米諸国等に比べて十分に普及していない。今後は、もっとも立ち遅れている心理的支援の抜本的拡充を核に据えつつ、薬物療法の利用環境もなお改善余地が大きいことを認識したうえで、精神・心理関連団体と連携した専門家育成を進め、包括的な禁煙支援体制を構築する必要がある。