抄録
加熱式タバコ(HTP)は「燃焼を伴わず有害物質を低減した」新型タバコとして急速に普及したが「有害性を低減したタバコ製品」という発想自体は新しいものではない。本稿は、HTPを単に新たなタバコ製品としてではなく、フィルター付きおよび低タール製品に連なる「有害性低減」製品系譜の派生製品として位置づけ、その開発意図・販売戦略・規制対応を批判的にレビューする。
低タール製品では、機械測定上の曝露指標の低減が疾病リスクの低減を意味せず、むしろ吸入行動の変化を引き起こすことで別種の害を生じ、その有害性低減表示は後に司法的に虚偽と認定された。これらから、加熱式タバコの「有害物質低減」主張も同じ失敗プロセスをたどる蓋然性が高い。さらに、集団規模の曝露・長い疾病潜伏期・曝露コホートの不可逆性から考えれば、害が証明されてから対応する姿勢自体が誤りであり、安全性の立証責任は製造者側に置かれるべきである。