2025 年 11 巻 4 号 p. A_25-A_31
歩行者など衝突被害が大きくなりやすい多様な主体が共存する生活道路では,とくに衝突時の運動エネルギーを低下させることが重要になる.本研究では,運動エネルギーの多少に直結する走行車両の「質量」に着目し,生活道路における事故被害との関係性を分析し,当該道路における走行車両の質量低下の意義を考察することを目的とする.警察庁が公開する交通事故オープンデータを通じて車両損壊程度と当事者種別から推定される車両質量の関係性を分析した結果,乗用車サイズが大きいほど自車の損壊が小さくなること,車両質量は自車の損壊程度を軽減する代わりに,他車の損壊程度を大きくさせ,自車,他車を含めた全体としての事故被害を大きくすること,とくにこの傾向は生活道路で顕著となることを明らかにした.