交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
特集号: 交通工学論文集
11 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 小林 貴
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_1-A_7
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、移動困難な地域に Green Slow Mobility(以後 GSM)等の低速なモビリティによる移動手段の供給の可能性を評価するために、人口分布、日常移動が必要と想定される施設の位置情報から、人・物流の発生する可能性のある潜在移動需要を推定し、GSM の供給可能輸送力や運行距離の制約に適した地域を示す手法を開発した。開発した手法により評価を行った結果、次の2点を明らかにした。第一に、全移動困難な潜在移動需要の 45%程度において、運行距離面・需要規模面から GSM が有効である。第二に、コスト面では、2 万[円/月/人]以下の条件で導入可能な地点は潜在移動需要の 3%程度であり、限られた地域であることがわかる。限られた地域ではあるが、全国に 3400 箇所程度存在する。

  • 阿部 舜哉, 佐々木 みのり, 浜岡 秀勝
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_8-A_16
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    高速道路において、対面通行となる暫定 2 車線区間の安全対策として、ワイヤロープが設置されている。これにより、対向車線への飛び出し事故件数は減少しているが、一方で、ワイヤロープへの接触事故が増加している。この対策として秋田県などでは、道路上に走行位置を示す車両誘導線が試験的に施工されている。しかし、この車両誘導線の効果を最も発揮する道路断面の位置や線の種類は明らかになっていない。そこで、VR を用いた走行実験によりこれらについて明らかにする。道路横断方向の走行位置とアンケート調査の結果から、道路中央の白色破線の外側から 120 ㎝離れた位置に車両誘導線を設置した場合、走行位置を安定させる効果が最も高いことが分かった。また線の種類については実線の場合、走行位置を安定させる効果が最も高いことが明らかとなった。

  • 中林 悠, 長内 圭太, 外山 敬祐, 田中 優太, 清宮 広和, 石田 貴志
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_17-A_24
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、都市間高速道路の自発光ペースメーカーライト(PML)を対象に、対策前と対策直後から 3 年後までの交通容量を比較することで対策の持続効果を検証した。その結果、対策直後の交通容量は対策前と比べて増加したものの、対策直後から 3 年後までで年々低下している傾向であった。しかしながら、対策後は対策前よりも交通容量の経年的な低下幅が小さいことから、交通容量の経年的な低下よりも PML 対策の持続効果の方が大きいようであった。さらに、先行研究の車線利用率の平準化を狙った横断方向への渋滞対策は交通容量の増加効果が持続していたものの、本研究の車両の速度調整を促す縦断方向への渋滞対策は交通容量が年々低下していた。このことから、縦断方向の渋滞対策は、横断方向への渋滞対策ほど対策効果が持続していない可能性を示唆した。

  • 三村 泰広
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_25-A_31
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    歩行者など衝突被害が大きくなりやすい多様な主体が共存する生活道路では,とくに衝突時の運動エネルギーを低下させることが重要になる.本研究では,運動エネルギーの多少に直結する走行車両の「質量」に着目し,生活道路における事故被害との関係性を分析し,当該道路における走行車両の質量低下の意義を考察することを目的とする.警察庁が公開する交通事故オープンデータを通じて車両損壊程度と当事者種別から推定される車両質量の関係性を分析した結果,乗用車サイズが大きいほど自車の損壊が小さくなること,車両質量は自車の損壊程度を軽減する代わりに,他車の損壊程度を大きくさせ,自車,他車を含めた全体としての事故被害を大きくすること,とくにこの傾向は生活道路で顕著となることを明らかにした.

  • 下川 澄雄, 高瀬 達夫, 浜岡 秀勝, 野中 康弘, 石田 貴志, 中林 悠
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_32-A_38
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、一般道の片側交互通行規制時における非飽和時の工事用信号サイクル設定方法を提示したうえで、ノモグラムを作成することで各変数が工事用信号サイクル設定に与える影響を考察するとともに、現地観測データによる適用性に関する検証を行った。本研究で作成したノモグラムより、サイクル長を長くするほど捌ける交通量が増加すること、規制区間長が長い場合はサイクル長を長く設定することが有効であること等を確認した。また、現地観測データによる検証では、提示したモデル式で算出したサイクル長が検証用データより短い傾向であること、その要因として実際の信号運用では全赤時間を若干多めに設定するなどの対応をしていることを勘案し、本研究で提示したノモグラムに対して、適切に余裕分(バッファ)を設定すべきことを確認した。

  • 吉城 秀治, 田中 龍人, 辰巳 浩, 田部井 優也
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_39-A_47
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    多くの地方都市をはじめとする中心市街地では人中心の空間へと変換を進めるまちなかウォーカブル推進事業が進められつつある。それを受けて学術的にも商業地における歩行者の回遊行動や行動特性を明らかにするための研究が行われているが、子ども自身に着目した研究は数少ない。そこで本研究では、商業地街路における子どもの移動の様子を観察し、アクティビティの実態把握を行うとともに、子どもの属性や歩行環境との関係について検討した。クロス集計の結果、アクティビティの発生状況は、年齢、同伴者、歩行環境がその生起に関わってくることが明らかとなった。そしてこれらの要因を説明変数にし、アクティビティの発生状況を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を行っており、各要因との関連を定量的に明らかにしている。

  • 橋本 成仁, 廣瀬 暖, 西村 航太, 氏原 岳人
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_48-A_57
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    国土交通省は、令和6年度以降の通学路について、小学校周辺を面的に捉えた交通安全対策を促進し、「小学校周辺はこどもの安全が第一」という意識の醸成を図ることを掲げている。ここで、面的な対策について具体的な施策の立案や施策内容の優先順位を検討していくためには、地域特性に応じた小学校周辺の交通事故特性の傾向を把握することが重要である。そこで、本研究では、一般的にスクールゾーンの対象範囲とされる小学校から半径500m内を「市街地型」、「郊外型」、「地方型」の3つに類型化し、各クラスターで負傷程度別に交通事故特性を比較した。その結果、地域特性によって交通事故特性の傾向が異なり、重傷・死亡事故が発生する要因も異なることを明らかにした。

  • 土井 康正, 萩原 亨, 高橋 翔, 吉井 稔雄
    2025 年 11 巻 4 号 p. A_58-A_65
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    冬期の札幌市では大雪に伴いひどい交通渋滞が発生する.本研究では,交通渋滞の対策である運搬排雪と拡幅除雪が交通流状態に与える影響について分析する.交通渋滞の要因としてブレイクダウンが考えられる.ブレイクダウンの発生有無を捉えるため,集計QK図上に発現するヒステリシスループの面積を用いる(以降,ループ面積). ヒステリシスループの拡大は平均速度の低下に加え交通容量の低下を表現するからである.本研究ではループ面積を,ブレイクダウンの発生可能性を含めた交通流状態を示す代理変数として用いる.ループ面積の変化を分析した結果,運搬排雪・拡幅除雪に伴って減少する傾向を捉えた.ループ面積が,運搬排雪・拡幅除雪が交通流状態に与える影響を示す指標としての有効性を示唆した.

特集号B(実務論文)
  • 弘津 雄三
    2025 年 11 巻 4 号 p. B_1-B_6
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    交通信号機は全国に約 20 万基整備され交通の安全と円滑に寄与している。信号機による交通流制御の性能が維持されるためには、交通状況の経年変化に応じて、制御パラメータ(サイクル長、スプリット、オフセット)、現示等を見直す必要がある。プローブ情報を活用して信号制御(信号秒数・現示)を見直す事例が増えてきたが、その見直しを効率的かつ効果的に進めるには、プローブ情報から混雑要因を簡便に推定できる手段の確立が必要であった。そこで、本研究では、一般的に流通しているリンクプローブ情報を用いて信号交差点の流入路において混雑要因を付加した交通状況を簡便に推定する方法として流入路 QK を描画して推定する方法を提案した。その提案手法の有効性及び実現可能性をシミュレーション実験により明らかにした。

  • 白石 智良, 青山 万吉
    2025 年 11 巻 4 号 p. B_7-B_12
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル 認証あり

    開かずの踏切などの課題踏切での渋滞に対して早急な対応が求められる。また、踏切事故は、減少傾向にあるが、依然として年間 200 件程度発生しており、事故件数を減らすための対応が求められる。改良の必要がある踏切道に対して、どのような交通施策を施すことが有効であるか、個々の踏切道周辺の交通状況を現地調査などにより十分に把握した上で検討する必要がある。本論文では、踏切待ちや先詰まりといった踏切周辺の渋滞発生状況や、急ブレーキ、急ハンドルによる踏切道周辺でのヒヤリハットの有無について ETC2.0 プローブ情報(走行履歴及び挙動履歴)を活用して簡易的に評価する手法を提案し、踏切道における同データの活用可能性について考察した。

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