2016 年 2 巻 2 号 p. A_1-A_10
流率密度関係(fundamental diagram,FD)は交通流の基本性質を表す重要な概念である.FD の推定にはこれまで定点観測が用いられてきたが,FD を移動体観測のみで推定できれば,定点センサがない区間でも FD を常時把握できる可能性がある.本稿は近年普及の著しい GPS 搭載プローブカーを念頭に置き,移動体観測によって収集されたデータに基づき FD を推定する方法を提案する.まず,FD の関数形を三角形と仮定し,同時に渋滞密度の値を仮定する.そして,サンプリングされた複数の車両軌跡を入力とし,自由流速度と臨界密度を推定する方法の一般的な枠組みを示す.提案した枠組みを検証するため,簡易な発見的解法を構築する.シミュレーションで得た交通データに本手法を適用した結果,推定された FD が実現象に近いことを確認した.